無実を争う場合に弁護士が必要なのはもちろんですが、事件を起こしたことが間違いないとしても、そのときこそ弁護士をつけることが必要です。私はこちらの活動をとても重視しています。

非行少年が少年審判を受ける意味

少年の場合は、成人の刑事裁判と違い、やった事件の重さだけで処分の重さが決まるわけではありません。その少年が再非行をしないで暮らしていくために最も適切な教育の手段は何か、ということをベースにして処分が決められるのが少年法の理念です(少年審判と刑事裁判の違い)。

家庭裁判所の少年審判手続は、事件を起こした子どもを責めるだけではなく、子どもが非行から離れて成長していく方法を考える場でもあるのです。頭を低くして、審判という台風が通り過ぎるのを待つこともできるかもしれませんが、子どもが非行から離脱するためのチャンスだととらえれば、関わってくれる関係者や専門家たちと相談しつつ、お子さんの今後のために何をすべきかを考えることもできるのです。

付添人弁護士としてやるべきこと

少年審判で少年につく弁護士を、少年法では「付添人(つきそいにん)」といいます。

面会を繰り返すこと

私は、付添人として、少年に何度も面会に行きます。そして、少年から話を聞きながら、今回の事件を起こしてしまった理由を少年と一緒に考えます。

少年の気持ちを聴かずに事件のことを一方的に責めても非行は止まりません。事件のときの気持ちや、そのころの家族との関わり、事件に誘ってきた友人との関係などを少年と一緒に振り返ります。非行のメカニズムは、その少年ごと、事件ごとに異なります。この少年の、この事件が起こったメカニズムを明らかにしていきます。

そして、この少年が非行から離れて暮らしていくためにはどうすればいいのかを考えます。その過程で、少年が今の生活をどう思っているのか,そして将来どうしたいと思っているのか(高校に行きたい、こんな仕事に就きたいとか)、被害者にどう責任を果たしていくのかなどを話し合います。

少年を取り巻く環境の調整

少年非行には、少年のまわりの環境が大きく影響しています。もしかすると、その子には、家族の中でのストレスが強く加わっているのかもしれません。それなら保護者の方と、お子さんとどう接するかについて話し合います。学校へ戻れるかどうかが問題になるなら、学校を訪問して学校での受け入れ体制について先生たちと協議します。

また、事件が起こるころには、子どもと保護者が対立してしまい、コミュニケーションがとれなくなっていることがあります。付添人は、少年鑑別所にいる少年から保護者への気持ちを聴き取って保護者に伝え、保護者の反応を聞き取ってまた少年に伝えるというように、間に入ってやりとりをします。こうして、親子のコミュニケーションが少しずつ回復していくこともあります。

少年の処遇プランを立てること

そうした活動をする中で、少年が非行から離脱していくためのプランを構築していきます。少年や保護者、場合によっては他の専門家たちと協議して作ったプランを家庭裁判所に提案し、適切な処分を求めます。当然ながらそのプランはその子どもごとに異なります。

付添人と協力しながら、親は子どもと話し合い、子どもの将来について真剣に考えます。そして子どもは裁判官に対して、自分の未来を懸命に語ります。そうした意見を裁判所に伝えた結果として得た審判の結果は,子どもにとって、保護者にとって、単に頭を低くして避けようとしていた審判とは違うものになっているはずです。

なお、こうした付添人の活動に必要な能力は、成人の刑事弁護とは異なる部分が多くあります。刑事弁護とは異なる専門性が必要なのです。